東京地方裁判所 昭和39年(行ウ)62号 判決
東京都港区麻布本村町二三番地
原告
柴崎勝男
同所同番地
原告
柴崎静子
右原告両名訴訟代理人弁護士
萬谷亀吉
美村貞夫
山下義則
東京都港区麻布材木町七一番地
被告
麻布税務署長 加藤時夫
右指定代理人検事
新井旦幸
同
法務事務官 山口三夫
同
大蔵事務官 三輪正雄
同
近藤一久
右当事者間の昭和三九年行(ウ)第六二号所得税課税処分取消請求事件につき、当裁判所は、次のとおり判決する。
主文
本件訴をいずれも却下する。
訴訟費用は、原告らの負担とする。
事実
原告ら訴訟代理人は、「被告が原告勝男及び同静子に対し、それぞれ昭和三八年八月五日付をもつて各原告の昭和三五年分所得税についてした更正処分をいずれも取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求原因として、次のとおり述べた。
一、被告は、それぞれ、昭和三八年八月五日付をもつて、原告両名の昭和三五年分所得税につき、各更正処分をし、その頃原告両名に通知した。
これに対し、原告両名は、それぞれ昭和三八年八月八日、被告に異議申立をしたが、被告がなんらの処分をしないので同年一二月二五日東京国税局長に対し審査請求したところ、同局長は、原告両名はいずれも昭和三八年一〇月三一日異議申立を取り下げていること等を理由として、昭和三九年五月二六日付で原告両名の各審査請求を却下し、同月二九日その旨原告両名に通知した。
二、しかし、原告両名は、異議申立を取り下げたことはないから、原告両名の審査請求を却下した東京国税局長の裁決は違法であり、原告両名は審査請求を経たものというべきところ、被告の前記各更正処分には所得を過大に認定した違法があるから、その取消しを求める。
原告ら訴訟代理人は、以上のとおり主張し、乙第一号証の成立は不知、その余の乙各号証の成立は認めると述べた。
被告指定代理人は、主文同旨の判決を求め、その理由として、原告両名は、問題の各更正処分に対する異議申立を昭和三八年一一月一日取り下げており、その審査請求は、国税通則法第七九条第三項に該当せず、かつ同条第二項にも当らず、仮りにこれに当たるとしても審査請求期限を徒過したもので不適法なものであるから、本訴は、適法な異議申立及び審査請求を経ておらず、不適法であると述べ、乙第一ないし第三号証を提出し、証人山田喜一郎の証言を援用した。
理由
証人山田喜一郎の証言及び成立に争いのない乙第二、第三号証並びに右証言及び乙各号証により真正に成立したものと認められる乙第一号証によれば、原告両名は、問題の各更正処分に対する異議申立を昭和三八年一一月一日取り下げたことが認められ、右認定に反する証拠はない。
従つて、その後に原告両名の提起した審査請求は、国税通則法第七九条第二、第三項、第八〇条第一項に該当するものとは認められず、不適法なものといわねばならない。
してみると、原告両名の本訴請求は、いずれも適法な異議申立、審査請求を経ておらず、不適法であるから、これを却下することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第八九条、第九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 白石健三 裁判官 浜秀和 裁判官 町田顕)